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子音が分離する?
日本語のほとんどは「子音+母音」で構成されています。
「か」=k+a
「き」=k+i
「く」=k+u
「け」=k+e
「こ」=k+o
平仮名をアルファベットで分解すると上記のようになります。
子音部分のkと母音部分のa,i,u,e,oの組み合わせですね。
これが歌では下記のように表現されることがあります。
「か」=k
「き」=k
「く」=k
「け」=k
「こ」=k
劇団四季とかには怒られそうですが、ポピュラーミュージックでは多々見られる表現となっております。
なぜ母音を省略し、子音単独での表現を行うのか。
という考察をしていこうというのが、この記事のテーマです。
子音の分離独立はいくつかの子音で起こりうるのですが、話がややこしくなるので今回は「かきくけこ」のk音の分離に絞ってみたいと思います。
では絢香様のbeautifulを例にとって分析していきましょう。
絢香 beautiful
わたしだけにきkえるように
そっとうたって
なみだでまえがみえない日も
となりでわらって
kらっぽのこころに
やさしいかぜ
こころがいたkなるほどいとおしkて
k音の分離効果について考える
聞いてみていかがでしょうか。
確かに母音が省略され、かすかな吐息の残りの余韻に残る程度になっていますね。
歌が上手い人。感動を作れる人って、本当に色々なことをしているなぁと感心するばかりです。
仮に絢香がk音単独で歌っている箇所をしっかりと「かきくけこ」で発音してみるとどうなるでしょうか。
是非実践してみてください。
どんな印象をうけたでしょうか。
この比較から見えるk音の分離独立効果について2つの視点から私見を述べます。
ゴーストノート化
例にあげた「k音」を一つ一つ見ていくと、ある共通点が見えてきます。
8分音符の裏の位置だったり、シンコペーションの前の音であることがわかります。
つまりゴーストノートとしての役割を果たしている可能性が高い。
コアな話になってしまいますが、人間がリズムを認識するときにはアタック部分を聞いて判断していると言われています。
k音はその発声方法、帯域からアタック音として利用しやすい点。無声音で母音と分離しやすい点がゴーストノートとしての利用価値を高めていると考えられます。
強弱の「弱」 表現
下記の記事では絢香様の強弱/抑揚の付け方について書いています。
息まぜ歌唱法!ウィスパーボイスでバラードの髪を目指す~絢香 beautiful~
「かきくけこ」のk音が無声音であることから、声帯の振動を伴わないため、息まぜ発声(ウィスパーボイス)との親和性が高いです。母音を抜くことで、優しい印象、弱々しい印象、切ない印象などを与えることができます。
有声音ではこの表現は出来ないので、k音が強弱の弱に選ばれるのは必然と言えるでしょう。
コラム 無声音と有声音 他の子音はどうなの?
無声音
声帯の振動を伴わない子音を無声音といいます。
「さしすせそ」のs音、「たちつてと」のt音、ch音も無声音のため母音と分離し、強弱の「弱」として同様の使われ方をすることがあります。
s音は強いアタックを作りづらいため、ゴーストノートとしての利用価値は比較的低いと思われますが、t音、ch音はゴーストノートの役割を果たすことも少なくありません。
有声音
「なにぬねの」や「がぎぐげご」のように声帯の振動を伴う子音を有声音といいます。
母音と分離が難しいので、ある程度はっきりとした発音。音量が出てしまいます。逆に強弱の「強」には有声音部分が使いやすいと言えるでしょう。
まとめ
歌のウマさって、天からの授かりものとか、センスとか、人生経験が必要とか色々な考え方を持っている人がいるかと思います。
私はウマさにもある程度文法的なものがあると思っています。
なぜ感動や共感を呼び起こせるのか。
他の語学を学ぶときに文法から学ぶように、歌も文法(ウマさの法則)を学ぶことで、よりリスニング力(ウマさを聞きとる力)やスピーキング力(アウトプットする力)を鍛えることができるのではないかと考えています。
このフレーズしびれたー!!!と思ったら、なぜそのフレーズでしびれたのか考えることは、上達の近道だと信じています。
というわけでこれからも頭でっかちに歌のウマさについて追求をしていきたいと思います。