
口を大き開けて歌いましょう!
と、音楽の先生に言われたことはありませんか?
大きく口を開けて歌うのが発声の基本!みたいに習うこと多いですよね。こういった指導は発声的観点だったり、歌詞を明瞭に発音するために行われることが多いです。上記の2つの効果もある一定の部分までは正しいと思います。ただ、わたしが強調したいのはこの2つのメリット以外にもうひとつあるのです。
口を大きく開けることで、日本語に奥行きを与えて、抑揚をつくることができます。これは中々認知されていない副産物です。本日のメイントピックはこれです。
また、一方で大きく口をあけることで起きる弊害があることも理解しておくべきです。
メリット、デメリット含めて、口を大きくあけて歌え!が正しいのか考察していきましょう。
口を大きくあけて歌うと起こる3つのいいこと
歌詞が明瞭になる
口の開閉は母音の形成に関与しているので、はっきり口を動かせば歌詞がある程度は明瞭に聞こえます。日本語の母音は5パターンしかないので、口さえしっかり動かしていれば、そこそこそれらしい母音に聞こえます。ただし、母音の形成は口の開閉だけで行われるわけではありません。なので、口を大きく開け閉めしても、100%きれいな発音になるかと言われたら否です。
リズム的なアプローチの幅が広がる
話し出すと3時間くらいかかるネタなので、簡単に。
口の開閉を極端に行うこと+滑らかに母音を繋げることで英語的な発音に近づきます。そして、唇と顎を大きく使うことで、母音の完成までの時間を稼ぐことができるので、黒人音楽的リズムアプローチをすることができます。極端な開閉のみで、母音をしっかりと独立させると槇原敬之さんや劇団四季のような歌い方になります。
この件についてはまた後日!
母音の変化を表現として使える
本日お話したいのはこちらのポイントです。リズムアプローチとも被ってくる部分なのですが、日本語に奥行きを与えることができます。メロ~サビと幅広く使えるテクニックですし、ジャンルを問わず、きっと歌唱力アップのお役に立てると思いますよ。
いつも大変お世話になっている絢香様のbeautifulをまたしても題材にして、こちらの分析をおこなっていきましょう。
絢香 beautiful
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beautiful
カテゴリ: J-Pop
解説
YouTube版を参考にしています。
v=vowel=母音
わたしだけにき(v1)こえるように
そっとうたって
なみだでまえがみえないひも
とな(v2)りでわら(v3)って<
v1
動画でわかりやすかったのでpick up
「きー」の間に歯と歯のあいだの隙間が広がっていくのがわかりますね。この口の開閉に合わせて母音の響きも微妙に変化しています。
v2
わずかな時間ですが、口が開くのに従い、母音が変化しています。この顎や唇の変化が母音の変化を誘発し、それが表現となっているのです。
一つ目が口の大きさ変化差なし。
二つ目が変化ありです。
口を大きく開けることで、その母音が完成するまで、音に変化を与えることができます。
v3
徐々に広がり、最後は顎が戻ってきて「う」に近い発音まで変化しています。なんという深み。絢香様すごい。一音の中に詰められている感情のエネルギー量が桁違いです。
一つ目が口の大きさ変化差なし。
二つ目が変化ありです。
細かな差ですが違いを実感していただけたでしょうか。一つの母音の中がグラデーションのように変化しています。これが出来るかどうかで歌の印象が50倍くらい変わります。
メロ部分が単調になりやすい一つの原因として、唇と顎の可動域が狭くなりすぎて、母音の変化や抑揚がつかないケースが多いです。メロ部分は静かに!ミニマムに!というルールを意識するあまり、一本調子になってしまいがちですね。
口の開け方のコツ
- 「う」と「あ」「え」「い」、「い」と「あ」などの唇の形の差が大きい発音の落差をしっかりと使うこと
- 「あ」「え」「お」などの口を大きく使いやすい母音の可動域をしっかりととること
この2つをしっかり意識してみてください。
この映像ではわかりにくいですが、とりあげた三箇所以外にも一音の中で母音が変化している箇所がたくさんあります。ウォーリーを探せ的な感じで、一曲中、母音の変化だけに集中して聞き取ってみてください。実際に口元を拝める箇所もあると思うので、視覚でも確認していきましょう。
発声的観点から補足
精神的な効果は幾分かあるかもしれませんが、口を大きく開けたからといって、大きな声が出るわけではありません。むしろ、無理な開け方をすることで、理想の発声状態に近づくことのほうが少ないでしょう。むしろ、慣れていないことをすると余計な筋肉を巻き込んで、窮屈な声に陥ることすら多いです。なので、ブログ記事とは矛盾するようですが、発声的な観点で言えばいきなり可動域以上に大きな口で歌うことはオススメできません。
じゃぁどうやったら大きく口をあけて歌えるようになるんですか!
という当然の質問が予想されます。
その人それぞれ発声上の癖や状態が異なるので、ブログ上ではこうすればOKよ!という普遍的なことを述べることはできないのです。ぜひ優秀なボイストレーナーを探して指導してもらってください。
一方で、顎関節症などの特殊な事例を除いては、現状の発声に無理ない範囲で、唇や顎の可動域を意識するだけで繊細な抑揚をつけることは十分可能です。より深みのある日本語の発音を身につけたい方はボイトレに励みましょう!
まとめ
唇と顎の可動を目一杯使うだけ生まれる抑揚があるということを覚えておいてください。
これマジで重要。本日から歌手の動画を見るたびに、口元にぜひ注目するようにしてください。そして、自分が歌っている時の口元と比べてみましょう。可動域の違いに衝撃を受けると思います。日本語の奥行きは勿論ですが、英語の歌を練習する機会があれば、ぜひ原曲アーティストの口元を確認してみてください。日本人とは比べものにならないくらい大きく唇が動いているのを確認できます。
参考になるかわかりませんが、アメリカ国歌を歌っているホイットニーの動画を貼ってお別れしたいと思います。
まじで、口の可動でかすぎて笑っちゃいます。
ちなみに日本人最大の可動域は私が知る限りはドリカム吉田美和女王です。
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